CHANCE 1 (前編)  =YOUTH=
 


私は今、東京国際フォーラムに来ていた。


館内には、さまざまなホールが在り、その中のホールAで開催される。


5000人が収容出来る、このホールの広さに、少しビビりそうになった。


私は、関係者席の、新星MUSIC用に確保してある、2列5段の計10席の一番前に座った。


一番後ろには、社長さんと、韓国からアーティストを連れてくる本社の統轄マネージャーさんが座るらしい。


他にも、日本支社のタレントマネージャーや、芸能部の人が座る事になっているそうだ。


報道関係者席には、既に200人以上が座っていた。


館内が薄暗くなった頃、私の隣に誰か座った。


って‥‥‥‥ゲッ!


桧山さんじゃん。


どうして、よりによって私の隣に!?


「今日は、観覧だったんですか?」


『ハイ。

社長にお願いし、来させて貰いました。』


「ふ~ん。

そんなに音楽が好きなんだ!」


『もちろん音楽は好きですけど、今日は勉強の為に来たんです。』


「勉強の為!?

音楽の勉強って事かい!?」


『違います。

アナウンサーとしての勉強です。』


何なの一体。


人をバカにした様な顔で笑って。


ちょっと仕事が出来るからって、私をバカにしてる!?


カッコイイって、思って損したわ!


「これをどうぞ!」


と言ってプログラムを渡された。


頭にきた私は、


『持ってますから。』


と、きつめの口調で断りながら、そのプログラムを押し返した。



‥‥‥‥何なんだよ、この女!


人がせっかく受け付けまで戻って、プログラムを取りに行ってやったのに。


何が気に入らないんだ。


そういえば、最初にぶつかった時にも謝らなかったし。


始めて会った時には、スタイルが良くて、背が高くて、きつめな感じだけど、セクシーな顔が笑うと可愛くて見えて、ハキハキとした物の言い方も、気持ちよくて、でも今は何か違う。


猫かぶってたのか!?


それにしても、また無視か!?


プログラムを突き返してきてから、それっきり何も言わずに前ばっかり見て。


って、今度は……


何か、ブツブツ言い出したぞ!


変な奴。


俺って、こんな女を一瞬でも


良いな!


なんて思ったんかい。


後ろの席に変わってやる!って、もう関係者席は埋まってるし…
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