CHANCE 1 (前編)  =YOUTH=
 


隣に座っている桧山さんが、チラチラとこっちを見ている。


さっきプログラムを突き返してやったから、文句でも言いたいんだ!?


でも、それどころじゃないんだよなぁ。


今は、ステージの上で繰り広げられている、ミュージック フェスティバルを、私なりにシュミレーションしてるんだから。


それにしても、木村アナも頑張っているなぁ。


こんな大舞台で、ぜんぜんビビって無いみたい。


私なら‥‥‥‥考えたら怖いよ~!



終わったら、私はとっとと席を立って、木村アナの所に行った。


『木村先輩、凄いです。ぜんぜんビビって無かったですね。』


「そんな事無いよ。

もう足がガクガクしてるよ~!」


『あの場面で、上手くボケて、SEIJIさんがツッコミ入れてたのって、打ち合わせしてたの!?』


「いゃあ~、あれは天然ダヨ。」


『ウソ!

絶妙なタイミングだったよ~!』


「言わないで~!

本当に恥ずかしいんだよ。」


『私もいつか、こんな大舞台でやってみたいよ。』


「冗談抜きで、ホントに足が震えるよ!」


『SEIJIさんとだったら、ダイジョブな気がしますよ。

一緒に出来たら良いなぁ。』


なんて、夢を膨らませながら帰宅して、ぬるめのお湯にゆっくり浸かってから寝た。




それから3日が過ぎて、今日は木曜日。


昨日も朝から、ベリナイの収録が推して、帰宅したのは深夜の0時くらい。


今日は、夕方の5時に出社した。


アナウンス部に行くと、


「アンナちゃんオハヨ!

今日は、アンナちゃんの仕事無いよ。」


『エッ!

どうしたんですか?』


「今日のアンナちゃんは、生放送1本だけでしょ!?」


『ハイ。そうですけど…。』


「実はねぇ、昭和の大女優の、山田凛子さんがたった今亡くなったんで、急きょどのTV局も特番に差し替えなんだって。」


『そうなんですか!

ずっと入院されてたから、気にはなってたんですけど、亡くなられたんですか。』


「だから、部長がね、アンナちゃんは今日はオフで良いよ!だって。

どうせ、昨日もベリナイの収録推しまくりなんでしょ。」


『ハイ。0時までやってました。

木村先輩は?』





 
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