CHANCE 1 (前編) =YOUTH=
「俺の勘は良く当たるんですよ。」
『気のせい、気のせい。
アイツは、私を見下してるんだよ!
どうせ、まともなアナウンス教育も受けてないし、大卒でもないし。』
「杏奈さんは、桧山さんが嫌いなの!?
俺の見る限りでは、杏奈さんも桧山さんも、お互い好き同士なのに、巧く噛み合ってない歯車みたいにしか見えないんだけど。」
『な訳ないジャン!』
「杏奈さんって、案外鈍い方なんじゃないのかなぁ。
普通、訳もなく女性に話しかけないですよ。
それも、わざわざ呼び止めてまで話しかけるって言うのは、気があるからでしょう。」
『考えすぎよ。』
「それじゃあ、実る恋も実りませんよ。」
『ハハハ!
今は、仕事が恋人みたいなもんだから、必要無いの!』
‥‥‥‥この調子だったら、当分二人は恋人同士になれないなぁ。
なんとなく分かるんだよなぁ。
桧山さんって、かなり杏奈さんの事が好きだと思う。
杏奈さんだって、あんなふうに言ってるけど、メチャクチャ桧山さんの事、意識してるし!
~♪~♪~♪~♪~
なんだよ!
チャンスとは、あんなに仲良く話して、俺が話しかけたら、何であんなにツンケンするんだよ。
おっといけない!
KYUの取材が入ってるんだった。
早く行かなきゃ!
~♪~♪~♪~♪~
翌日の朝、会社に行ったら、アナウンス部の皆が私の事をジロジロ見ている。
何か合ったの!?
『アンナ、昨日桧山さんと話してたでしょ!?
二人って、付き合ってるの!?』
「そんな訳無いじゃない。
たまたま話しかけてきただけですよ。」
『彼、結構モテるんだよ。
頭は良いし、背は高いし、仕事も出来るから、狙ってる女性社員も結構多いのよ。
私も後3年若かったら、チャンスもあるんだけどなぁ。』
と言って、今年29才になった木村アナが、残念そうに嘆いている。
「ヘェ~!彼、モテるんだ!
あんな生意気な男の、どこが良いんだか。
私だったら、白川ゼネラルマネージャーの方が、渋くてカッコイイと思うわ。」
『オジサンじゃない。
やっぱ若い男の方が良いわよ。』
なんて話をしている間、男子社員は二人の会話に聞き耳をたてている。
あぁ、仕事が恋人!?
嫌だ~!やっぱ、本物の恋人が欲しいかも~!