CHANCE 1 (前編) =YOUTH=
イントロは、ピアノとクラシックギターが、サビの部分をアレンジしたメロディーを8小節、その後ドラムとベースが入って更に8小節。
ネオクラシックなメロディーラインにロックのリズムと言う、独特なイントロだ。
ブラックコンテンポラリーの様にも聴こえるが、ギターの全音符がピアノと不協和音を奏でる部分が、150年の時を越えて現代クラシックが蘇った様な荘厳さをかもし出している。
KYUの声量は、思った通り凄かった。
俺達の演奏に負けないだけの力強さと、心に浸透してくる温かさがあった。
Aメロ-Bメロときて、すぐに2番の歌詞が入る。
3番の歌詞へ入る前に間奏16小節が、俺とテジュンの見せ場になる。
この部分のドラムはハイハットとスネア、それにバスタムのみで、メゾピアノ(m.p.)での演奏だ。
16小節の内、残りの8小節からピアノが、同じメロディーをクレッシェンドしながら4回繰り返していく。
それに併せてドラムもクレッシェンドしていき、3番に突入。
そして、いよいよサビの部分に入った時には、KYUの声量はマックスになり、訴えかけるように、愛する人へ約束を誓うのだ。
再び8小節の間奏が入り、ギターとドラムのみで演奏する。
ギターは爪を使ってのクラシックギター奏法で、かなり早い16分音符のオンパレードである。
そして、もう一度サビの部分を繰り返していくのだが、最初の4小節はギターのみ、次の4小節はギターとベースのみ、そのあとはラストまで全員での演奏だ。
最後まで歌い終わると、ブースの中の親父と本堂さんが、顔を見合わせて笑っていた。
「OK!
良くここまで仕上げたな!
アレンジには文句無い。」
『アレンジには文句無いが、演奏だ!
もっと丁寧に、譜面通りに演奏出来ないのか!?』
相変わらず本堂さんは厳しいです。
「今日は、練習する時間が無かったから。
全員で併せてやったのも、これが最初だから、3日ください。」
『よし、わかった。
じゃあ、3日後の水曜日の夕方4時に、NSスタジオ1号店に集合しろ。
その日にレコーディングをするから。』
「わかりました。」
『じゃあ、3階のピアノを置いてあるルームを押さえといてやるから、3日間自由に使ってくれ。』