CHANCE 1 (前編) =YOUTH=
あの後、俺達は3階に降りて、閉店ギリギリまで練習した。
昨日も一昨日も、学校サボってスタジオに籠りっきりだった。
毎日、俺のマンションで全員が泊まり込みだ。
ソナ(俺の彼女)やソラ(俺の妹)、ミリちゃん(テジュンの彼女)やナナちゃん(ジョージの彼女)まで入れ替わり立ち代わり遣って来て、食事や洗濯をしてくれた。
ヒカルちゃんは、大学受験に向けて猛勉強中の為に来れなかった。
ケントが寂しがってたが、なんと同じT大を受けるらしい。
男ばかりだから、彼女達の優しさは助かる。
それぞれの彼女と顔合わせも出来たし、意外と楽しかった。
ジョージは、フィリピンのタガログ語を勉強しているそうだ。
ナナちゃんと、タガログ語で会話していたのには驚いた。
ソラは、実家からオモニ(お袋)の手料理を持って来てくれたが、アニキの俺とはほとんど会話してくれなかった。
KYUや女同士で話してばかりだ。
飯を食って、再びスタジオに戻った。
練習して帰宅したら、掃除や洗濯を済ませ、晩御飯まで作っておいてくれてる。
そして、水曜日の昼、休憩室に集まった俺達は、コーヒーを飲みながら最終チェックをしてから楽器を持って第1-NSスタジオ(原宿スタジオ)へと向かった。
「西条店長、ご無沙汰してます。
今日は、宜しくお願いします。」
『やぁ、チャンス君、久し振りだね。
TV観たよ。腕上げたね。』
「とんでもないですよ!まだまだ勉強です。」
『もうすぐ社長と本堂もこっちに着くから。
グランドピアノも調律済んでるからな!』
「ありがとうございます。
それじゃあ、俺達はレコーディングスタジオに先に入って音合わせと練習しときます。」
『わかった。
レコーディングスタジオは地下1階に在るから。』
「エッ!?
7階に在ったんじゃなかったですか!?」
『あぁ、チャンス君は知らなかったんだ。
去年の暮れに第9スタジオ(本郷スタジオ)造っただろ!
あの後、ここのレコーディングスタジオは地下に移したんだよ!
今7階は、カラオケ配信システムのターミナルになってるんだよ!』
いつの間に……。
カラオケ配信は、新宿の日本支社でやっていたはずなのに……。