CHANCE 1 (前編) =YOUTH=
「アボジ、また無駄使いしたんだなぁ。
本郷スタジオだって、俺がT大を受験するって言ったら、じゃあ、大学の近くにスタジオ造ってやるぞ!って言うから、ジョークかと思っていたけど、本当に造ってしまうし。」
『ところで、本郷スタジオの1階のテナント貸しをしているスペースは、全部埋まったのかい!?』
「いえ、まだ50坪のスペースが一区画空いています。」
『やっぱりなぁ。
最近不景気だろ!
ここのテナント貸しも35坪一区画空いてるんだよ。
以前、若者用のアウトレットの店が入ってたんだけど、倒産してしまったんだ。
スタジオも週末しか満室ならないし、2階のライブハウスは、土日と祝日の前日しか開けてないんだ。
平日は、人が集まらないからなぁ。』
「大変なんですね。
場所は良いんだから、何か良いやり方が見付かれば当たると思うんだけどなぁ。」
『大事な1号店を任されているんだけど、俺は音楽の事しか分からないから頭痛いよ!』
「頑張って下さい。
俺も、何か良い案が合ったら連絡しますから。」
『よろしくな。』
「じゃあ、地下に行ってきます。」
『頑張ってな!』
「はい。」
地下に行って又驚いた。
スタジオ経営なんて、そんなに儲からないのに、降りたらすぐに自動ドアが開き、そこには20畳程のスペースがあった。
無駄に広い!
自動販売機が2台設置されており、応接セットが置かれてある。
ブースの中の広さは、16畳ちかくあり、スタジオ内は50畳(25坪)はあった。
グランドピアノに、各種アンプ、マイクスタンドとマイクが5本有り、スピーカーが四方の壁の上部に天井から吊るされていた。
『すごいにぁ~!
最新の機種ばかりだよ~ん!』
「チャンス、お前んとこの会社って儲かってるんだな。」
『このドラムセット、メチャクチャ高い良いやつだぜ!』
「俺も驚いてる。
まさか、こんなに金かけてるとは知らなかった。
もともと俺の親父は無駄使いし過ぎる性格だけど、やり過ぎだな。
このベヒシュタインピアノってドイツのトップブランドだぜ。
新品だったら700万円はすんだから。
コンサートホールなんかで使ってるグランドピアノが有るだろ!?
あれと同じランクのピアノだよ。」