CHANCE 1 (前編) =YOUTH=
一通り演奏が済んだところで、ようやくミキサーのレベル調整が出来た。
その間、西条さんが本堂さんに注文つけたり、本堂さんが西条さんのセッティングを変更させたりと、なかなか先に進まないのである。
もちろん、俺達へのダメ出しもあったんだが……。
只二人とも同じ意見なのは、最初から最後まで、一発録りじゃないと終わらさせてくれないって事。
二人ともを納得させる演奏かぁ~!
キッツイなぁー。
TAKE65で、ようやくレコーディングが終わった。
スタジオ内の壁掛け時計を見ると午前0時を回っていた。
ジョージは、久し振りのグランドピアノに感動しながら、楽しんで演奏していたが、KYUはかなり喉を酷使したため、黙ってソファーにへたりこんでいた。
テジュンも、スラップをし過ぎて、親指と人差し指と中指に冷たいオシボリを巻き付け二の腕をマッサージしていた。
ケントは、腱鞘炎(けんしょうえん)になる~!と言いながら、手首や二の腕を温かいオシボリで温めている。
俺も、右手の爪がジンジンしていたが、それでも皆よりは楽だった。
西条さんと本堂さんは、録音されたマスターテープとデジタルマスターを、大事にケースに仕舞い、明日最終チェックして、プレス加工にまわすと言っていた。
アボジ(親父)は鞄の中から封筒を取り出し、
「皆、お疲れ!
これ、日当な!
チャンスは、これとは別に、CDが売れたら印税が入って来るように手続きしとくから。作詞とアレンジの両方が入るから、ミリオン行けば良い小使いが出来るぞ。
KYUも歌唱印税が入るからな!」
『チャンス、アレンジ手伝ったんだから、印税入ったらオゴレよ~ん!』
「もちろん!
ジョージが居なかったら、ここまで仕上げられなかったからな。
最新のキーボードでもプレゼントするよ。
じゃあ、ぼちぼち帰りますか!?」
『今晩まで泊めてくれよな!?
もう実家まで帰る元気無いから。』
「良いぜ。」
『帰りにコンビニ寄って食料買って行こうか。』
「腹減ったよなぁ。」
『レコーディング始まると、本堂さん飯休憩くれないんだもんなぁ。』
と言う訳で、俺達5人は、スタジオから俺の車に乗って、コンビニ経由で、本郷の俺のマンションに向かった。
日当は、一人5万円入っていた。