CHANCE 1 (前編) =YOUTH=
「韓日物産で!?」
『あぁ、そうだよ。
俺のアボジ(親父)と同郷だし、もう長い事務めている。
アイツのお袋さんは、昔は歌手だったらしいよ!
韓妍兒(ハンヨナ)って知ってるかい!?』
「えぇ~ッ!
アイツのお袋が韓妍兒(ハンヨナ)だって?
知ってるよ。
コリ(故郷)とか、ヨジャエヌンムル(女の涙)とか歌ってた演歌歌手だろ。
昔は、韓国で大ヒット飛ばして、日本に来て再デビューするんだって頑張ったけど、全然売れなくって、いつの間にか消えてしまったんだよなぁ。」
『私も知ってるわ。
私のオンマ(ママ)がファンだったから、いつも家ん中で曲が流れていたわ。
とってもきれいな歌声だったよ!』
「その息子が、俺のアボジ(親父)の会社から、今度デビューするそうだよ。」
『新星MUSICから!?』
「どうやら、そうらしい。
CALMって言うバンド名だそうだ。」
『カ-ムか!
おとなしいとか、穏やかなって意味だよな。
嘘くせ~!
アイツには似合わねぇ~!』
「そんなにひどい奴なんか!?」
『次から次へと女をとっかえひっかえして、人の彼女でも平気で手を出す奴だ。
奴の通称名はたしか金田昌守(カネダマサモリ)って言ってたな。』
「マジかよ!?
たまんねぇなぁ。」
『オッパ、どうしたの?』
「昌守の昌は、ハングル語でチャン、昌守の守は、ハングル語でスって発音するんだよ!
だから、アイツの名前は、俺と同じチャンスだよ!
俺は、長寿と書いてチャンスだがな。」
『だから、DJ-Cって訳ね!
私のチャンスとは大違いだけどね!』
「何かしらけたな。
これから4人で、どっか行かねぇか!?」
『それじゃあ、今からカラオケにでも行くか!?』
と言う事になって、バイキングの料理をたらふく食ってから、俺達はSeoul Nightを後にした。
~♪~♪~♪~♪~
向かったカラオケ店は、親父の経営している新星グループの傘下にあるカラオケチェーン店《新星GTS》の渋谷店である。
因みに、GTSとは
GATE TO SUCCESSの略だそうで、意味は登竜門である。
年に2回、新星GTSの全店舗77店で、一斉にカラオケ大会を行い、優勝者には歌手デビューする為のチャンスを手にする事が出来るのだ。