CHANCE 1 (前編) =YOUTH=
4.Countdown Live
翌日から、また俺達5人はスタジオにこもって練習していた。
12月31日から元旦の深夜に掛けてのカウントダウンライブの為である。
演目は、
1.My Love
2.約束
3.sacrificed
4.Get a chance,get a rhythm
の4曲を演奏する事になっている。
たった20分ほどの出番しか無いが、それでも遣るからには、いつも真剣にやるのが俺達5人である。
何度も何度も繰り返し練習して、気が付けば、昼飯も食べずに夕方6時を回っていた。
一旦休憩して、食事に行く事にした。
本郷スタジオから、歩いて5分ほどのところに在る、学生が良く行く食堂で、ボリューム満点のトンカツ定食やラーメン・餃子定食、焼肉定食やサバ味噌煮定食、それに鳥唐揚げ定食と、それぞれの好みで食事して、腹一杯になっても全員で2500円という安さである。
1コイン食堂、恐るべし。
この1コインで食事が出来る方法を考えたのが、日本でこのT大裏に在る、ゆしま食堂である。
なんと、ここのオヤジは俺達の大先輩にあたるのだ。
T大の経済学部を卒業してから、日本で3本の指に入ると言われている食品会社《A●F》の営業部長まで務めたんだそうだ。
在学中、料理屋でアルバイトをしていた頃から調理する事が好きになり、卒業してからも自炊して、遊びに来た友人にも料理を振る舞ったりしていたそうだ。
30才の時に、このゆしま食堂の一人娘の大森亜矢子さん(当時25才)と出会い、熱烈な恋の末に結婚したんだって。
だけと、亜矢子さんが38才の時に、お父さんが亡くなり、その2年後に、後を追うようにしてお母さんも亡くなったそうなんだ。
当時45才にだったA●F勤務のご主人の、鎌田営業部長は、中途退社して、奥さんの亜矢子さんと一緒に、このゆしま食堂を切り盛りしてきたんだって。
元々、料理が好きだった鎌田さんは、料理のレパートリーを増やした。
安く仕入れて料理の値段も下げて、遂には、安い・早い・美味いの上にボリューム満点の4得食堂として、この界隈では有名である。
大衆食堂としては、異例のチェーン展開を始めたのも、このゆしま食堂が初めてだとか!
有名大学の近くには、必ずこのゆしま食堂が在ると言っても過言ではないくらいだ。