CHANCE 1 (前編)  =YOUTH=
 



たかがマンボウと言う魚一匹に対しても、取り出したメモ帳に何やら色々と書きこんでいる。


腹を満たした俺達は、マンションに戻って楽器を車に積み込んだ。


一旦会社に寄って、打ち合わせをした。


今回は、SEIJIさんの時間帯が、カウントダウンだそうだ。


言い忘れていたが、SEIJIさんは元々
《Nightmare》
と言うビジュアル系バンドのボーカルをしていたのだが、現在活動休止中なんだ。


今回、カウントダウンライブに出演が決まって、1年半ぶりの活動再開なんだそうだ。


この1年半は、メンバーの充電期間と言う訳で、皆ソロで活動したり、作曲したり、プロデュースしたりと、自分達の力を試していたそうだ。


雑誌なんかには、不仲説や、金銭的なイザコザが有るって書いてあったが、実際にはメチャクチャ仲の良い中学生の頃からの同級生だ!


でも、SEIJIさん達も、今年で35才になったのでビジュアル系から、普通の恰好でステージに立つのだそうだ。


最近では、KYUだけでなく、俺達5人全員を可愛がってくれる。


俺達の音楽性や実力も理解してくれ、色々とアドバイスもしてくれる、頼れる兄貴的存在なんだ。


このNightmareと実力を二分しているのが、栗田栄祐がボーカルをやっている、

《The Big Dipper》

と言うバンドである。


去年のカウントダウンは、このThe Big Dipperが務めたんだ。


彼等のバンドは、ロック、ラブバラード、ブルース、パンクなどのジャンルを越えた、オールラウンドなスタイルのアーティスト集団である。


俺達が目指しているのも、彼等の様なバンドである。


そして、遂に始まったカウントダウンライブ。


武道館と言う巨大な箱での演奏に、KYUと俺達はビビリ気味だ!


控え室にやって来たSEIJIさんが、


『やぁ、皆!

今日は楽しもうぜ。

今年最後のお祭りなんだからよ。

しくじろうが、弦が切れようが、スティックを落とそうが、気にすんなよ!

しっかり遊んで来いよ、お前等!』


と、俺達に気合いを入れてくれた。


全員で握手をして、《やってやるぞ!》

と叫んだ。


その瞬間、SEIJIさんが‥‥‥‥

《‥‥プ~ッ!》


って、ナント



オナラを一発かまして、控え室を出ていった。
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