CHANCE 1 (前編) =YOUTH=
思わず笑ってしまった俺達は、いつの間にか緊張がほぐれていた。
気合いを入れ直して、いざステージへと向かって行った。
大歓声の中で、俺達は俺達の持っている力を出しきって次へと繋いだ。
控え室に戻っても、まだ興奮していた。
「お疲れ!」
『お疲れ!
良かったにゃ~!
凄い拍手を貰ったよ~ん!』
「あぁ、盛り上がってくれたな。
一番最初は、プレッシャーも半端ないな。
でも、どうにか上手くいってホントに良かった。」
『さてと、これからどうする!?
他のバンドの演奏を観ていくか!?
それとも、一旦帰って初詣にそなえる?』
「とりあえず、帰って寝たいよ~ん!」
『俺も、ちょっと休みたいな!
ずっと睡眠不足で練習してたからなぁ。』
「僕も、帰って寝たいです。」
『俺も、実家で正月の法事しないといけないから帰るよ。』
と言う訳で、皆着替えてから楽器を担いで車に乗り込んだ。
本郷スタジオに皆の車を置かして貰ってたので、本郷スタジオで皆を降ろしてから、KYUと二人で俺も実家に向かった。
~♪~♪~♪~♪~
元旦の朝、アボジ(親父)が法要(祖先への供養と新年の挨拶)をする。
オモニ(お袋)の作った法事料理が、祭壇にところ狭しと並んでいる。
キムチやナムルは勿論の事、いしもちの塩焼きやメンテイ(干し鱈のコチュジャン和え)、ムーやチヂミ、シリトック(韓国の餅)や果物等を昨日から作っていたらしい。
三拝三礼をして、お供え物を先祖へ取り分ける。
もう一度三拝三拝して、家族でお供え物を分けあって朝食をする。
マッコルリを飲みながら、アボジ(親父)はいい気分になって、楽しい会話をしている。
そこへ
ピンポーン!
「は~い!どちら様ですか!?」
と、オモニ(お袋)が玄関に行った。
『アナタ、白川ゼネラルマネージャーさんが新年の挨拶にいらっしゃったわよ。』
「よう、アケオメ!」
親父古い!
今時、そんな言い方しないって!
『社長、新年あけましておめでとうございます。
本年も、宜しくお願いします。』
「まぁまぁ、挨拶はその辺にして、こっち来て一緒に食事したら!?」
『それでは、失礼します。』
「お車ですか?」
『いえ、タクシーで来ました。』