CHANCE 1 (前編) =YOUTH=
6.Past's Secret
「まさか、君がテジュンのお袋さんとは思わなかったよ、愛美(エミ)。」
『お久しぶりって言うか、よくも私を捨てて、英美(ヨンミ)と結婚したわね!
あの日、あの子が明洞(ミョンドン)で迷子になって、アナタと出会わなければ、私と結婚してたかしら?』
「それは、ちょっと分からないけど、あの日ヨンミちゃんと出会った瞬間に運命を感じてしまったんだ。
インスピレーションって言うか、何て言うか、あの時
《俺は、この女性と結婚する》
って、確信したんだ。」
『何を勝手な事言ってるのよ!?
あの後、突然
《別れてくれ!》
って言ってきて、私がどんなに傷付いたか知らないでしょ!?
死のうとして、走って来る車に飛び込んだんだから!』
「エ~ッ!
車に……。」
『そうよ!
アナタに突然捨てられて、《運命の人に出会ったから!》って、意味分かんないし、悔しいし、だから東大門(トンデムン)市場の前を走って来る車に飛び込んだのよ。
死んで、アナタの事を恨んでやろうと思ってね!』
「でも、愛美(エミ)は生きている。
そんなヘタな嘘をつくなよ。」
『嘘じゃないわ。
あの時、飛び込んだ車を運転していたのが、テジュンの父親、今の私のだんなよ。
あの人は、その時ちょうど韓国に仕入れに来てたの。
私は、その彼の車に飛び込んだの……。
でも、彼の運転が巧くて、私はかすり傷だけで済んだのよ。
その後、彼は私の事情を知り、滞在中は良く連絡をくれる様になったわ!
優しい彼のおかげで、アナタへの憎しみから解き放された私の心は、次第に彼へと傾いて行って、そして愛し合うようになったわ。』
「そうだったんだ。
しかし、元々俺と愛美(エミ)って、友達以上の関係では合ったけど…あの頃の俺は、そういった関係の女性が何人か居たからなぁ……。」
『エ~ッ!そうなの?
私ってセフレの一人にすぎなかったって事?』
「あぁ、済まない。
あの当時、俺は調子に乗りすぎていたんだ。
ヨンミちゃんと知り合って目が覚めたんだ。
酷い事をして済まなかった。
君の心を分かってあげられ無かった。」
『もうあれから22年が経ったから、許してあげるわ。
しかし、驚いたわよ。
うちの娘と付き合ってるのがアナタの息子とはね!』