CHANCE 1 (前編) =YOUTH=
「俺も、さっき社長室に入ってきた君を見て驚いたさ!」
『チャンス君って言ったかしら。
彼は、真面目で礼儀正しい子ね。
最初、直ぐに気に入ったわ!
それに、何処と無くアナタに雰囲気が似てたし……。
でも、まさかアナタの息子とは!
最初、アナタの息子って分かった瞬間、あの頃の事を思い出して、ついカ~ッとなって、うちの娘との交際を反対したのよ。
…でも、もう良いわ。
アナタに捨てられたから、今の旦那と出会えたし、今の私は彼をとっても愛しているもの。
だから、今度チャンス君と会ったらソナとの交際を許してあげなくっちゃね!』
「あぁ、そうしてあげてくれ。
息子は、ソナちゃんの事を大切にしているし、大事に思っているんだ。
きちんと将来を見据えての交際をしている。
ソナちゃんを大事にしているからこそ、今は手も出していないし、浮気もしてないんだぜ。」
『それは知ってるわ。
私のワガママで、ソナには辛い思いをさせてると分かっていたし、アナタとチャンス君は違うものね。
今度、きちんと交際を認めてあげて、二人の将来を見守っていくわ。』
「あぁ、そうしてあげて欲しい。
俺達の事は、過去の思い出として、しまっておこうな!」
『そうね。
でも、一回だけアナタを殴りたいわ。』
「それで愛美(エミ)の気が晴れるなら、好きにして良いよ。」
『じゃあ、いくわよ。
思いっきりいくから、しっかり目を閉じて、歯を食いしばって。』
「……こうか?」
『いくわよ!
チュッ!』
「ウワッ!
何すんだよ!?」
『ほっぺたにチュッってしたくらいで、何驚いた顔してんのよ。』
「俺達は、結婚してるんだぜ!」
『この先、どうこうなろうなんて考えてないから安心して。
これは、私の中のアナタへの決別の意味でのキスだからね。
これで私は、やっと過去の呪縛から解き放されたって感じだわ。』
「それじゃあ、今度からはビジネスの相手として、それから息子の交際相手の母親として、接していくよ。」
『そうね。
じゃあ、これからも宜しくね。
後、ついでに息子のテジュンの事も宜しく。
まさか、子供達が二人とも、アナタと交流が有るとは!
ホントに驚きだわ。』
「こっちこそ驚いているよ!」