CHANCE 1 (前編) =YOUTH=
《林宅》
『チャンス君、久しぶりじゃな。
ようこそ我が家へ。今日は妻も居るから会ってくれ。』
「はい叔父様。お久しぶりです。まずは、礼をさせていただきます。」
と言うと、リビングに通された。
そこには、初めて会うソナのお袋さんがソファーに座っていた。
叔父様が隣に座ったところで、
「おば様、はじめまして。高山寿生と申します。
ソナさんとお付き合いさせていただております。
まずは、礼を受けて下さい。」
と言って、韓国式の礼を行った。
『ようこそいらっしゃい!
話しは主人から聞いているわ。
どうぞ、お座りになってちょうだいな!』
そこで、やっと許可をいただき、向かい側のソファーに座った。
『今日は娘の誕生日に来てくれてありがとうね。』
「こちらこそ、朝からお邪魔して申し訳ありません。」
『まぁまぁ、礼儀正しい子ねぇ。
うちの息子にも見習わせたいわ。』
「ハラボジ(じいちゃん)が礼節に厳しい人で、私もよく怒られています。」
『それにしても、ハングル語、上手ねぇ。』
「はい、父に習いました。
母は在日韓国人なんですが、父は生粋の韓国人なんです。」
『そうなの!
お父様は、何をなさってらっしゃるの?』
「若い頃は、バンド組んで、メジャーデビューしたらしいのですが、その後あまり売れなかったみたいで、今は、音楽プロデューサーの仕事をしています。」
『まぁ、メジャーデビューされたの!?
なんてグループかしら。
私も生粋の韓国人なんですよ。主人と結婚するまでは、韓国で生まれ育ったから、もしかして知ってるかも。ホホホホ。』
「父は、XYZって言うバンドのギター兼リードボーカルをやってました。」
『もしかして、高山くんのお父様は、ヒョンジュって言う方かしら?』
「父を知っているんですか?
確かに、私の父はヒョンジュ。
コ ヒョンジュと申します。」
『……』
「どうかされましたか?」
『いえ、ちょっと昔を思い出していたのよ。
=約束=って言うシングルCDをリリースされてましたわね。』
「はい、良くご存知なんですね。」
…………