CHANCE 1 (前編) =YOUTH=
まさか、外国人が日本では公務員に成れないとは気がつかずに……
そんな初歩的なミスをおかした俺は、大学では、仲間を集めてバンド組んで過ごしていた。
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お袋は、実家が韓国家庭料理店で、今でも俺のじいちゃんとばあちゃんでやってる焼肉屋の手伝いをしている。
お袋の弟で、俺の叔父さんが後を継いでオーナーとしてやってるんだけど、醤(ジャン)は、じいちゃんが今でも作っているし、キムチは、ばあちゃんが作っている。
味を受け継いでいくのは難しいけど、叔父さんは修業しながら頑張っているみたいだ。
お袋は高校を卒業してから、実家の韓国家庭料理店で働いていたんだ。
初めての盆休みに唐辛子を仕入れに韓国へ両親と出掛け、そこで親父と知り合ったんだって。
俗に言う、親父の一目惚れなんだって聞いてる。
お袋も多少はハングル語が喋れたので、初めての韓国とはいえ、仕入れをしている両親をほっといて、一人で遊びに行ったんだけど、途中で迷子になっちゃったんだそうだ。
明洞(ミョンドン)のあたりをウロウロしているところを、駆け出しのミュージシャンだった親父が声をかけて、宿泊しているロッテワールドホテルまで連れて行ってくれたって、お袋が昔話してくれた。
お袋も一目惚れだったそうだ。
その後、1年間遠距離恋愛をして、ついには韓国に嫁いで行ったんだって。
ところが、俺がお腹ん中にいるときに突然日本に住む事になったんだよね。
詳しく教えてはくれなかったけど、最終的には親父が日本に住む事を望んだらしい。
だから、俺は在日韓国人で、本名は
高 長寿
コ チャンス
通称名は
高山 寿生
タカヤマ トシオ
友人達からはチャンスって呼んで貰ってる。
本当に仲の良い奴しか、そのニックネームの意味は知らない。
只、小さい頃からのあだ名なんだ!って言っているだけ。
俺が在日韓国人だと知っているのは、ほんの数人だけなんだ。
だって、いじめの対象になったり、差別の目で見られるのも嫌だからさ。
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