CHANCE 1 (前編) =YOUTH=
ケントが作詞・作曲したのは、ちょっとだけメタルテイストのはいったハードロック。
タイトルは、
《Fraction Of Memory》
邦題は、
《記憶のカケラ》
狂おしいくらいに愛した女性が、遠く離れてしまい、ショックで記憶を無くして仕舞った男が、少しずつ記憶を取り戻し、その記憶のカケラを集めて、最後には完全に思い出し、その女性に会いに行くって言う歌詞だ!
なかなか面白そうな歌詞だが、良く見ると、ちゃんとしたラブストーリーが出来上がっているのだ。
苦悩する男の心境を歌った部分がBmスケールにぴったりマッチしている。
荒削りな、メロディーラインだけど、ギターコードを弾いていると、ケントの作曲はなかなか筋が良いと感じた。
音符は、上がったり下がったりが激しい割りには、ボーカルや他の演奏者に無理の無い、スムーズな作りになっている。
20回ほど繰り返して演奏する内に、ちゃんとしたバンドスコアも完成した。
それぞれが、楽譜に書き留めた物を、ファイルケースに回収して入れておいた。
いつかは、俺達のバンドスコアを発売する為に…。
3回目くらいからKYUも、ボーカルとして入ってきた。
歌い終わった感想を聞いたら、
『女の人に逃げられた、女々しい男の歌かと思っていたけど、とっても情熱的な愛の歌だったんですね。
メロディーは、ハードロックなのに、歌っていて切なくなってくるんですが、歌い終わったら、とっても暖かい気持ちになりました。』
「だよな!
KYUが、気持ち良く歌うと、必ず韓国の民謡に近いメロディーが、ちょっぴり入ってくるもんな!」
『エッ!本当ですか?』
「そうだよ。
そのKYUの、だれにも真似出来ない独特な節回しが、俺達の持ち味になっているんだけどね!」
『そうだったんですか!』
って、KYU以外の他のメンバーも《そうだったんだ!》って肝心してるし!
もしかして、今まで誰も気が付かなかったの!?
せめて、テジュンは在日韓国人なんだから、気が付いても良いだろよ!
「テジュン、気が付かなかったの!?」
『はっきりいって、気が付いて無かったよ。
独特な節回しはわかってたけど、KYUは韓国人たから、ボーカル用の楽譜には、そう言う音符が書かれているんだとばかり思ってたよ。』