CHANCE 1 (前編) =YOUTH=
4.Challenge
KYUの部屋のクローゼットには、数種類の迷彩の上下の他には、プリントTシャツとジーパン、スェットの上下ばっかりだった。
後は、初めて日本に来た時に着ていた一張羅のスーツだけ。
「KYUは、ホントにお洒落しないよなぁ!
ソラとデートする事になったら、どうするんだ!?」
『桧山マネージャーにでも借りようかと思ってます…。』
「困ったもんだなぁ。
明日は、行く前に会社に寄って、衣装部で何か借りよう。
その後、俺と買い物な!
服や小物やアクセサリーも揃えないと!」
『お金が勿体無いですよ!』
「お金の事は気にせず、カッコイイKYUに生まれ変わらないと!」
『分かりました、ヒョン(アニキ)。』
「じゃあ、また明日な!」
『アンニョヒ チョムシプシオ ヒョン!(オヤスミナサイ アニキ)』
翌日は、どうにか衣装部のスタイリスト達のおかげで、カッコイイKYUに変身して、無事撮影も終了した。
その後、その衣装のまま二人で渋谷で買い物をした。
KYUのファンの女のコ達が、次々と握手をせがんできて大変だった。
携帯の写メを撮られまくりだったが、KYUは嫌な顔一つしないで微笑みを振り撒いていた。
俺はと言うと、POLICEのサングラスをかけて、ひきつった感じでちょこっと笑うだけだった。
未だに、あのファンの声援に馴れないのだ。
一通り揃えた俺達は、その足で本郷スタジオに向かった。
とりあえず、荷物は車ん中に置いといて、スタジオに入ると、本堂さんが娘と話していた。
「珠ちゃん、久しぶりだねぇ!」
『チャンス兄ちゃん、お久しぶりです。
XYZ、アタシの学校でも凄い人気ですよ。』
彼女の名前は、本堂珠枝ちゃん。
本堂店長の娘さんなんだが、とにかく元気な女のコだ!
今年、高校三年生になったばかりだ!
「ところで珠ちゃん、珍しいね!
今日はどうしたの?」
『これからバイトの面接なんだけど、帰りにお母さんから買い物頼まれて、お父さんに買い物のお金を貰いに来たの!』
「そっかぁ。
ちゃんとお手伝いもするし、バイトも頑張って、良い娘さんですね、本堂さん!」
『いくらおだてても娘はやらんからな!』
「ハハハ……。俺にはちゃんと、結婚を約束した彼女がいますから。」