CHANCE 1 (前編) =YOUTH=
彼は、ハングル語、英語、日本語の3ヶ国語を話せる。
音楽センスは、大した物で、ヒップホップ、ロック、バラード、ポップな流行歌まで何でも歌いこなす。
今回は、デビューするに当たって、
英語でヒップホップ系の曲を、
ハングル語でポップな歌謡曲を、
そしてバラード調のラブソングを
日本語バージョンと
ハングル語バージョンで歌い、マキシシングルCDとして、発売する予定なのだ。
親父が作詞、作曲を手がけて、韓国でNo.1のアレンジャーMr.ハンこと、韓銘国(ハン・ミョングッ)先生が遣ってくれるそうだ。
ハン先生は、親父が若い頃にお世話になった作曲家で、今は、アレンジャーの方に力を入れているそうだ。
そんな、大きな期待を背負って、日本に遣って来ている朴儒(パクユ)は、今は俺とスタジオで遊んでいる。
彼とは、1月に韓国に行った時からの仲だが、意気投合して、俺の事をヒョン(アニキ)と慕っている。
スタジオの部屋から、休憩するために外へ出て、1階の受付横の自動販売機で缶コーヒーを2つ買い、その横にある休憩室の中に入った。
そこには、4人掛けのテーブルが6つ有り、一番入り口近くのテーブルにパク君と座った。
その時、ちょうど泰俊(テジュン)達が遣って来た。
『すみません。
予約してないんですけど、部屋空いてますか?
キーボードの置いてある部屋なんですがぁ…。』
「はい。大丈夫ですよ。3名様ですね。初めての方は、身分証明書をコピー撮らせていただきますので。」
『はい。学生証。』
「少しお預かり致します。学割が出来ますので、お一人様1時間600円です。」
『安いねー。じゃあ、3時間で。』
と、言って5,400円を払い2階の2-Aの部屋のカードを受け取った。
このスタジオは、1階は受付と休憩室の他は、テナント貸しをしている。
現在は、コンビニとお弁当屋さんの2店舗が入っていて、後は2店舗分空いたままになっている。
スタジオは、2階から4階で、5階は録音スタジオと、スタッフルームと倉庫になっている。
地下には150人入れるライブハウス《CHANCE》が在る。
スタジオの各部屋は、中に入ってドアのすぐ横のカードホルダーにカードキーを差し込むと室内照明が付く仕組みになっている。
休憩室の奥にエレベーターが在る。
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