CHANCE 1 (前編) =YOUTH=
3.Go To Korea
成田空港に到着した俺は、受付カウンターで搭乗の手続きを済ませると、航空券と搭乗券をパスポートと一緒に手提げのバッグに仕舞い、国際線の搭乗口へ。
手荷物の検査や通関を通り、長い通路の先に在る免税店を目指した。
免税店に入り、コモやハラボジ等に、ブランディーやタバコ、そして自分様にPOLICEの最新のデザインのサングラスを購入して、待合室へ向かった。
時間は現在11時35分。
後20分程で搭乗が開始する。
それまでi-podん中に入っている曲をイヤホンで聴きながら時間を潰した。
そう言えば、不思議な事に誰も声を掛けて来ない。
そんなに俺は、売れて無いのかなぁなんて、少し複雑な気持ちになった。
まぁ、話しかけて来られたら来られたで、鬱陶しいんだけどな!
何時もみたいに、ワックスで髪の毛をツンツンに立てていないし、サングラスも掛けているからだろう。
イヤホンからは、The Real ThingのYou to me are everythingが流れ、目を閉じて聴いていると、なんだか落ち着く。
暫くの間そうしていたら、ふと人の気配を感じて目を開けた。
そしたら、目の前には見知らぬ女の子がジーッと俺の顔を見上げていた。
いつまでも見つめている女の子に俺は、
「どうしたの!?」
って聞いてみた。
『ママが居なくなっちゃった。』
と、小さい声で独り言の様に言った女の子は、今にも泣きそうな顔をしていた。
迷子かよ!
この子の親は、一体何をしてるんだ。
「お嬢ちゃん、名前は?」
『ミヤビ。
ママを知らない?』
ミヤビって!!!
俺の彼女の通称名と一緒かよ。
これも何かの縁だし、一緒に探してあげるか!
「ママのお名前は言えるかな!?」
『うん!
ママの名前はね、ハシモト エミって言ってね、さっきのさっきまでね、ここに座ってたの。
でね、ミヤビがね、あそこの動く階段の近くにあるテレビをね観てたの。
でね、戻って来たらね‥‥‥‥。』
ヤベッ、ついに泣き出しちゃったよ!
「ミヤビちゃん、お兄ちゃんが一緒にママを探してあげるから、大丈夫だよ!
絶対に見つかるから、泣いちゃダメだからね!」
『…、うん!』
そう言って、手の甲で涙を拭こうとしたから、ハンカチを渡した。