CHANCE 1 (前編)  =YOUTH=
 



そこは、高品格な広東料理が楽しめる本格中華レストランで、《桃林》と言う。


中国伝統美にモダンな印象を調和させた中華レストラン桃林は、


《南山から冠岳山、南漢山城、そして漢江まで続く素晴らしい景色が、パノラマで広がる最高の展望が自慢。》



と、パンフレットに書いてあった。


だから、今日のディナーは、窓際の席を予約しておいたのだ。


中国本土から呼び寄せた料理長が、最高の料理を作ってくれる。


俺は、2人用のコース料理を頼み、窓の外を二人で観ながら、


「夜のソウル市内もとっても綺麗だけど、ソナの方がもっと綺麗だよ。」


なんて言ってみたら、ソナが


『もうオッパ、照れちゃうじゃない。

急にそんな事言うから、顔が真っ赤になっちゃうよ。』


「今日は、このホテルの部屋を取ってあるから、食事が終わったら部屋でゆっくりしような!」


『…うん!…』


「ソナ、顔がホントに真っ赤!

何想像したの!?」


『オッパのイジワル。

もうホントに恥ずかしい~!』


なんて話をしている俺達って、端からどう映っているんだろうか!?


バカップル?

兄妹?

マッ良いか!


店内を見渡してみたら、かなり素敵な創りになっていた。


中国の木を細工して作った置物が、壁に作られた棚に、綺麗に並べられている。


照明も、ホールの中心に天井から吊るされたシャンデリアや、各テーブルにも変わった照明も、かなりこだわりをもってデザインされていた。

壁紙なんか、手描きだし!


厨房の中も、客席から調理しているところが眺められる様になっている。


ソナと二人で、そんな店内を楽しみながら料理を待っていた。


しばらくすると、前菜の登場だ!


・桃花冷菜(トファネンチェ)―冷菜の盛り合わせが、観る者の目を釘付けにする。


このお店は、料理をスタッフが取り分けてくれるから、食事をより一層楽しめる。

次に出てきたのは、
・蟹肉魚翅湯(サンオジヌロミワ・ケサルスープ)―ふかひれと蟹のスープだ!

ほぐした蟹の身の味と、フカヒレの食感を楽しめるとろみのあるスープがフワフワとした卵白にも染み込んでいて、益々食欲をそそる。


スープの後には、

・海参松茸(ヘサムソンイ)―なまこと松茸。


食感の違う2つの食材が、香りと共に口の中に広がる。


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