CHANCE 1 (前編) =YOUTH=
本堂さんは、親父が日本に来た当時、インディーズのバンドで活動していた頃に知り合ったそうだ。
ギターはイマイチ?らしいけど、ミキサーとしての腕を買って、雇ったのだ。
主任の肩書きではあるが、ポジションは日本で親父のかかえているアーティストの発売している全てのCD録音を手がけている。
給料は、下手な中間管理職の4倍は軽く越えているらしい。
「本堂さん!
今時間空いてますか?」
『やぁ、チャンス!練習は終わったのかい!?』
「いゃ、まだガッチリやってます。
ちょっと相談があるんですけど……」
『なんだい!?』
「ちょっと、4曲だけ録音して欲しいんだけど、宜しいですか?」
『珍しいネェ!
チャンスが録音って言うの1年ぶりかも...』
「今度、親父の連れて来たパクユ居るでしょ!?
彼が今度出す曲の録音するの本堂さんが担当ですよね!?」
『そうだよ。』
「試しに、俺達のバンドが演奏して、パクユに歌って貰おうと思うんだけど、良いですか?」
『お前等のバンドの売り込みかい!?』
「そういう訳じゃ無いんですけど…」
『まッ、良いよ。
どうせ今日は暇だし、じゃあ、上行って準備しときな。
俺もすぐに上がるから。』
休憩室に戻った俺は、
「なぁ皆、ちょっと良いかなぁ?」
『何だい?』
「今からスタジオ5って言うのが5階にあるんだけど、そこは録音スタジオになってるんだ。
そこで、さっきやった4曲をCD-ROMに軽く焼いて貰おうと思うんだけど、時間有るかなぁ!?」
3人『良いぜ。』
と言う訳で、俺達はエレベーターに乗って、5階へ行った。
『メチャクチャ広い部屋だねぇ~!』
「音の反射や拡がりを計算に入れて作ったら、こんなにデカくなったんだって親父が言ってた。」
『オゥ、誰か来た!』
「皆、紹介する。
天才ミキサーの本堂さん!
それから、アシスタントの天道君。」
『宜しくお願いします。』
「じゃあ、俺達は中に入って準備をしますので、後はお願いします。」
『オゥチャンス、俺に頼むんだから、最高の演奏を聴かせてくれよな!』
俺達は、Vサインをしながら、ブースの中に入って行った。
…………