CHANCE 1 (前編)  =YOUTH=
 


もし、全国大会まで行って、優勝でもしたら、彼の宣伝にもなるから、本腰を入れて、花道を飾ってあげたいと思ってるんだ。




*********

《バンドカ-ニバル》


俺達のバンドXYZは、関東大会で優勝した。


東日本大会でも優勝した時には、マジで全国を狙えるんじゃないかと、正直燃えた。


しかし、全国大会の2日前になって、ユー君の具合が今一つ良くない。


「夏風邪か?」

『ナンカ ソウミタイデス。』

「病院に行こう!」

『ハイ。』

と言う訳で、俺は、誕生日に親父が買ってくれた愛車の●ルファードにユー君を乗せて、実家近くの佐野内科に向かった。

ここの院長先生は、オモニ(お袋)の同級生の親父さんで、息子も一緒に親子でやっている。

以前は、小さな町医者だったが、息子が医大を卒業して5年目くらいに大改築を行い、今は立派な設備も備わった大病院になっている。


心遣いのあったかい、患者想いの病院である。

ようやく佐野内科に着いた。
駐車場に車を停めて、院内に…


受付カウンターで


『どうされましたか?』

「彼なんですが、夏風邪をひいたみたいで…」

『わかりました。
こちらに記入して、名前が呼ばれるまでお待ち下さい。
こちらの体温計で、熱を計ってくださいね。』


しばらくして、名前が呼ばれ、ユー君は診察室に入って行った。

やはり風邪をひき始めていたらしく、扁桃腺が少し炎症を起こしていた。


点滴を打って貰って、薬局でベンツペラルスを12カプセルと、イソジンを貰って帰って来た。


「今日は、ゆっくり休んで、明日も調子が悪かったら、バンドカーニバルは諦めてな!」

『嫌デス。
絶対ニ直シテ見セマスカラ。』

「わかった。わかった。
じゃあ、加湿器のスイッチ入れておくから。タンクの水ん中に、ミントエキス入れといたから、喉も楽になると思うよ。

ちゃんと薬飲んで寝るんだぞ。

ウガイも忘れないようにな!」

『ハイ。分カリマシタ。』





…………




翌朝、実家に顔を出して、ユー君の様子を見てみたら、声がだいぶ良くなっていた。

熱はないな!

安心したが一応ユー君にはクギをさしておいてから、学校に向かった。




…………




 
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