CHANCE 1 (前編)  =YOUTH=
 


《大学1年の7月》


 今日から7月。

 本格的にパクユのメジャーデビューへ向けての活動が開始した。


 今までボイストレーニングや歌い込みをしっかりやって来たので、ダイジョブだとは思うが、気になった俺達は講義が終わったら、すぐにNSスタジオへと向かった。


 受付カウンターのお姉さんにパクユの事を聞いたら、本堂さんや俺の親父達と一緒にスタジオ5にこもっているとか。


 エレベーターに乗って5階で降りたら、喫煙ブースの中に親父と本堂さんが休憩していた。


「アボジ(親父)、ユー君の調子はどうなの!?」


『どうもこうもないよ。

ユーの奴、ほんとにちゃんと練習してたのか!?

さっきから、タイミングを外してばかりだ。歌い込みしていたとは思えない。』


「彼も、この日本デビューには賭けていたんだぜ。

練習、手を抜く奴じゃ無いことくらいわかってるだろ。」


『じゃあ、今から中に入って彼の歌を聴いてみな!』


と言うので、俺達は全員中に入って見守る事にした。


*********

『OK! じゃあ、ユー君、ナエ サランからいってみようか。』

「♪♪~~!」


『ストップ!ストップ!

どうして出だしからトチるんだよ。

メゾピアノから入って、8小節まで引っ張ってBメロに入る手前まで徐々にクレッシェンド、Bメロから一気に…………

もう良い。最初からいって!

ドラムとギター、もう少し抑え気味で演奏してみてくれ。』


「♪♪~~!」


『どうだチャンス!?今のユーの歌、どう思う?』


「俺達の演奏で歌ってた時より萎縮しているんだと思うよ。
彼は多分プレッシャーを感じてるんだよ。
それに、若干…」

『どうしたんだよ。
若干…何だ!?』

「言って良いのかなぁ……」

『良いから早く言いなさい。』

「ユー君、見放さないよなアボジ!?」

『当たり前だ。

気にしないで良いから。』

「実は、少し感じてたんだけど、ユー君は本番に弱いと思うよ。

俺達と一緒にスタジオで練習してた時には、のびのびと歌っていて、俺が聴いての意見だけど、プロとしての実力をヒシヒシと感じたんだ。

それがバンドカーニバルの2~3日前に風邪ひいたり、本番当日は、病み上がりとはいえ、声が出てなかったんだ。

審査員はごまかせても、俺の耳はごまかせないから。」
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