CHANCE 1 (前編) =YOUTH=
《大学1年の7月》
今日から7月。
本格的にパクユのメジャーデビューへ向けての活動が開始した。
今までボイストレーニングや歌い込みをしっかりやって来たので、ダイジョブだとは思うが、気になった俺達は講義が終わったら、すぐにNSスタジオへと向かった。
受付カウンターのお姉さんにパクユの事を聞いたら、本堂さんや俺の親父達と一緒にスタジオ5にこもっているとか。
エレベーターに乗って5階で降りたら、喫煙ブースの中に親父と本堂さんが休憩していた。
「アボジ(親父)、ユー君の調子はどうなの!?」
『どうもこうもないよ。
ユーの奴、ほんとにちゃんと練習してたのか!?
さっきから、タイミングを外してばかりだ。歌い込みしていたとは思えない。』
「彼も、この日本デビューには賭けていたんだぜ。
練習、手を抜く奴じゃ無いことくらいわかってるだろ。」
『じゃあ、今から中に入って彼の歌を聴いてみな!』
と言うので、俺達は全員中に入って見守る事にした。
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『OK! じゃあ、ユー君、ナエ サランからいってみようか。』
「♪♪~~!」
『ストップ!ストップ!
どうして出だしからトチるんだよ。
メゾピアノから入って、8小節まで引っ張ってBメロに入る手前まで徐々にクレッシェンド、Bメロから一気に…………
もう良い。最初からいって!
ドラムとギター、もう少し抑え気味で演奏してみてくれ。』
「♪♪~~!」
『どうだチャンス!?今のユーの歌、どう思う?』
「俺達の演奏で歌ってた時より萎縮しているんだと思うよ。
彼は多分プレッシャーを感じてるんだよ。
それに、若干…」
『どうしたんだよ。
若干…何だ!?』
「言って良いのかなぁ……」
『良いから早く言いなさい。』
「ユー君、見放さないよなアボジ!?」
『当たり前だ。
気にしないで良いから。』
「実は、少し感じてたんだけど、ユー君は本番に弱いと思うよ。
俺達と一緒にスタジオで練習してた時には、のびのびと歌っていて、俺が聴いての意見だけど、プロとしての実力をヒシヒシと感じたんだ。
それがバンドカーニバルの2~3日前に風邪ひいたり、本番当日は、病み上がりとはいえ、声が出てなかったんだ。
審査員はごまかせても、俺の耳はごまかせないから。」