CHANCE 1 (前編) =YOUTH=
『そっかぁ。
小さなライブハウスとか、スタジオで友達同士でいる時に歌うのは、凄く良くて、大舞台やプロのスタジオミュージシャンと一緒に作るCD録音になると歌のちょっと上手い素人並まで落ちてしまう。
こう言いたいんだな。
だからと言って、徐々に慣らしてからデビューなんて悠長な事言ってる場合じゃ無いし、今月末にはCD発売と同時にライブもやるんだぞ。
それも2,000人は入れるホールを借りてのイベントライブが、パクユのメジャーデビューだ。
その他にも、TVの音楽番組では、生で歌って貰わなくっちゃ困るし、ラジオ番組にも出演をねじ込んでいるんだ。
雑誌の取材も数社来てるし、CDの発売日は決定事項だからな。
今の状態じゃあ、韓国に寂しく帰って貰うしか無い。
だが、そういう訳にもいかないだろ!?
チャンス、どうすりゃいいかな。』
「アボジ(親父)エライ弱気だなぁ。
ようは、本番に強くなれば良いんだろ。」
『出来るのか!?』
「出来るかどうかは分からないけど、1週間くれたら、どうにかなると思うよ。」
『だがな、CD発売日が決まっているから、録音だけは3日以内に遣らないと、工場でのプレスに間に合わないんだよな。』
本堂「社長,何も聞かずに、ちょっとこれ聴いて貰えますか?」
スタジオ内に流れる音楽
♪♪~~!
『凄く良いよ。本堂ちゃん!
これパクユの声だよな。
演奏しているのは、彼等か?』
「いいえ、違います、社長。
これらは全て、チャンス君達のバンドが演奏したやつを、彼に頼まれて録音したんです。」
『…………』
「どうされました?社長。」
『本堂ちゃん、どう思うよ!
俺の耳がショボくなったのか?
この演奏がプロのスタジオミュージシャンと聞き間違えるとは……』
「私も、録音にあたって感じました。
チャンス君達のレベルは、プロのミュージシャンと言っても構わないレベルだと。」
『そっかぁ。
数々のアーティストの録音を手がけてきた本堂ちゃんの耳でも、そう感じたなら間違いないな。
スタジオミュージシャンの方達、忙しいのに、わざわざ時間裂いてくれて済まないな。
今日は残念ながら、録音出来る状態じゃ無いから、あがってくれて良いよ。
日当は弾んでおくから。』
「有り難うございます。
また何か合ったら声かけて下さいね。」