CHANCE 1 (前編) =YOUTH=
3階に降りたら、真っ直ぐに通路が有って、その両サイドに大小様々なスタジオが有った。
CDなんかも、ここで作れちゃうんだから、大したもんだ。
録音スタジオだけは、無駄にでかい。
スタジオ内とブースの間は、ガラス張りで、俗に言う金魚鉢である。
智盛ヒョンニム(ジソン兄さん)を探して、一部屋ずつ覗いていく。
一番奥の6畳ほどの部屋に居た。
一人でベースを弾いていた。
微かに聞こえてきた曲は、SUM41の《No Reason 》だ。
前回、韓国に来た時に、ちょうど智盛ヒョンニム(ジソン兄さん)のバンドのライブがあって、その時にやってた曲だ。
あの時は、俺も友情出演して、この曲一緒に弾いたっけ。
懐かしいなぁー
なんて思っていたら、突然ベース音が止んだ。
『チャンス、久しぶりやなぁ。』
「ジソンヒョンニム、オレガンマ ニムニダ。(兄さんお久しぶりです。)」
『相変わらず、お前のハングル語、上手いな。
いつ韓国に来たんだ?』
「今日着いたばっかりです。」
『それより、ヒョンニム(兄さん)なんて堅苦しいから、ヒョン(アニキ)で良いよ!』
「アラゲッスムニダ、ヒョン。ペガ コッパヨ。シクサ ハプシダ。(わかりましたアニキ。腹が空いたよ。飯食いに行きましょう。)」
『OK!カジャ。(行こう!)』
智盛ヒョンニム(ジソン兄さん)は、ベースアンプの電源をおとし、部屋の電気と空調を切って出てきた。
二人でエレベーターに乗って1階へ。
その間、お互いに近況報告して、隣のジャージャー麺屋さんに入って行った。
「ヒョン、髪の毛黒に戻したんですね?」
『あぁ、今年から社会人だからな!
いつまでもチャラチャラした恰好も出来んだろ!』
「以前は、金髪のソフトモヒカンでしたからねぇ。俺もジソンヒョンの真似して、去年までは金髪にしていたんですよ。今は、黄色いッスけど。」
『ハハハ、チャンスは俺の真似してばっかりだな。』
「もちろんです。俺、ジソンヒョンニムをインスパイアしてますから。
まずは恰好からでも近づきたいです。」
『ヒョンだ!
それにしてもチャンス、お前また身長伸びたんか?』
「はい、今は、186cm有ります。」
『じゃあ、俺と2cmしか違わないんだ!?』