CHANCE 1 (前編) =YOUTH=
シャワーを浴びた後に、良く冷えたマンゴージュースをグラスに注ぎ、一気に半分ほど喉に流し込み、チラッと壁の時計に目をやると、11時を廻ったところだった。
急いで、グラスの中のジュースを飲み干し、下着を付けた。
迷彩のチノパンを履き、スカルにホワイトスネークが巻き付いたプリントTシャツを素肌に着込み、シルバーの幅太の指輪を両手に1つずつ嵌めて、クロム・ハーツのクロスのネックレスをして、重ねてXYZのタグ付きネックレスもする。
左耳にルビーのピアスを嵌め込み、ポリスのサングラスをかけて、ポケットに携帯と財布を押し込み、メットとバイクのキー、それに親父に届ける封筒を手に、セキュリティシステムをセットして家を出た。
バイクのシートを開けて、車検証が入っているところへその封筒を放り込みエンジンをかけた。
心地良い音と共に4000回転迄一気に吹き上がってから2分ほどアイドリングをしてから家を後にした。
韓日物産は、やはり赤羽に在るのだが、少し離れている。
歩くと40分ほど掛かってしまうが、バイクだと10分もかからない。
会社は、広い敷地内に倉庫や駐車場も在り、その他にも巨大な冷凍室や冷蔵室の倉庫も在るのだ。
オフィスは6階建てで、従業員は敷地内だけで300人以上が働いている。
派遣社員とパートのスタッフも入れると、500人以上になる。
駐輪場の片隅にバイクを停めて、メットをバイクに引っ掛けて封筒を手にオフィスの正面玄関へと向かった。
昔から良く知っている守衛の長谷さんに軽く挨拶をして建物の中に入って行った。
社内は、1階に受け付けカウンターが有り、その右横に通常のエレベーターが3基在るのだ。
受け付けカウンターの左横にもエレベーターが2基在るが、そちらは重役クラス以上が使うようになっている。
社員証を持っていない俺は、いきなりセキュリティゲートを飛び越え、左横のエレベーターに向かった。
すると、突然若い受け付け嬢が声をかけてきた。
『ちょっとすみません。
勝手に何をしてるんですか!?
通行証を発行しますので、どちらに行かれるか、こちらの用紙に記入してください。』
生意気そうな、その若い受け付け嬢にイタズラ心が芽生えた俺は、
「あんたに関係無いっしょ!
ちょっと用事済ませに来ただけだから。」
怪訝な顔になった受け付け嬢が、生意気にも、俺の恰好を見て、不審者と勘違いしやがった。