CHANCE 1 (前編)  =YOUTH=
『そうだったんですか!』

「あぁ、もし彼女が大学進学をしていたら、テジュン、お前と同級生だったろうなぁ。」

『エッ!?』

「彼女、頭良いんだぞ。T大の教育学部だって十分に狙える程にな!

でも、彼女のお袋さんが、旦那が亡くなった後に無理をし過ぎて、体調を崩してしまったんだ。

だから、今家計を支えているのは彼女の毎月の給料って訳なんだよ。」

『知らずに俺、彼女に酷い事を言ってしまいました。』

「どうしたんだ!?」

『さっき、俺の事を不審者扱いしたから、売り言葉に買い言葉みたいな感じで、高卒のくせにとか、悔しかったらT大に入ってみろとも…』

「それは知らなかったとしても言い過ぎだな!

男だったら、ちゃんと彼女に謝り、許しを乞いなさい。」

『そうですね。
俺、今からちゃんと謝って来ます。』

「あぁ、そうしなさい。
それでこそ我が息子だ!」

『それでは失礼します。』

と言って、社長室から出てエレベーターに向かった。

1階に着いて、受け付けカウンターに行くと、見たことのある受け付け嬢がいた。

「ねぇお姉さん、さっきまでここに居た辻本って言う女の子何処に行ったか知りませんか?」

『テジュン君、彼女狙い?
あんなガキっぽい子なんかやめて私と付き合わない?

今わたしフリーなんだけど・・・』

「お姉さん、何を言ってるんですか!

そんなんじゃ無いですから。

彼女に酷い事を言ってしまったので謝ろうと思って来てみたら居なかったもんで。

今彼女休憩に入ってるんですか!?」

『そうよ。
社員食堂には行かないから、きっと裏のキムチ工場の横にあるガゼボで一人でお弁当食べているか、長谷さんと一緒に食べていると思うよ。』

「そうですか。
有り難うございます。それじゃあ失礼します。」

『じゃあねぇ。

それから私と付き合う事、考えててね。』

俺は苦笑いで会釈してキムチ工場に向かった。

ガゼボの下で、タオルを首に掛けた辻本さんが、一人でお弁当を食べていた。

後ろからそぉ~っと近づいて覗き込んだら、工場のおばちゃんから貰ったのだろう、タッパに入った千切れたり、切り落とした端っこのキムチと、自分のお弁当箱に入った玄米のご飯、それに卵焼きが2~3切れと言う寂しい昼食を食べていた。


「ここに居たんだ。」

と後ろから声をかけてみた。
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