CHANCE 1 (前編)  =YOUTH=

ビックリした彼女は、思わず卵焼きをガゼボの床に落としてしまった。

と思ったら、すかさず拾い、口を尖らせて、フゥ~フゥ~とゴミを吹き飛ばしてパクッて食べてしまった。

「何やってるんだ。下に落ちたのに食べるのかよ!?」

『急に声をかけてビックリするじゃないの。

ここはいつも私が綺麗に掃除してるから綺麗なの!

それに、3秒以内ならセーフよ!

もったいないし!』

「凄い女だな。」

『ところで何?
まだ文句が言い足らないの!?』

「そんなんじゃないよ。

さっきは言い過ぎた。

メチャクチャ反省してるから。

ちょっと調子に乗りすぎて、酷い事を言ってゴメンな!」

『何よ突然!?

もう、さっきの事は忘れたから良いよ。

許してあげる。』

「ホントにゴメン。」

『じゃあ、仲直りしよ!?

私は、辻本美里(ツジモトミサト)』

「俺は林泰俊(イム・テジュン)、通称名はハヤシヤストシ。」

『そっかぁ。社長の息子だもんね。
私も在日韓国人だよ。本名は、辻美里と書いてシフ・ミリって言うの。』

「ファクシミリみたいな名前だなぁ。」

『あんた、またケンカ売りに来たの?』

「いえ、冗談です。もう言いません。」

『皆、私の事《ミリ》って呼んだり《ミサト》って呼んだりしてるから。』

「シフ氏って…呼んだりしたら…怒るよ…ねぇ!?」

『なんか他人行儀な感じで嫌だよ。』

「俺の事はテジュンって呼んでくれたら良いよ。ミリさん。」

『わ…わかった。』

って言いながら、少しうつ向いてしまった。

覗き込んでみたら、なんか顔真っ赤にしてるんだけど……

「どうしたの?やけに顔が赤いけど、どっか具合悪いの?」

『何でもありませんです。』

「早く飯食って仕事戻らないといけないね。邪魔しちゃったみたいだから、もう休憩時間終わってるよ!」

『エェ~ッ!?』

「大丈夫だよ!
俺から受け付けの先輩に巧く言っておいてあげる。

早く食べて仕舞いな。」

『あ……ありがとうございます。』

「良いよ。俺のせいなんだから。じゃあ、また今度。」

『アンニョン!』
(バイバイ!)

「アンニョン!」

俺は、また1階の受け付けカウンターに行き、彼女に親父から頼まれた廃棄書類をシュレッダーにかけて貰うの手伝わしたから、少し遅れるって言っておいた。





 
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