CHANCE 1 (前編) =YOUTH=
門をくぐり、敷地内に入ると300坪以上はあるだろう庭に出た。
梅や桜、松などの木々が植えられ、綺麗に手入れされた芝生が鮮やかだ。
徐行しながら駐車スペースに●ルシオを停めてエンジンを切った。
玄関前にある呼び鈴を鳴らすと、中からお手伝いさんが現れ、中に案内された。
外観は洋風の建物だが、中の造りは和風の趣きである。
客間に通されたおいらは、とにかく心臓がバクバクとうるさくて、落ち着かなかった。
だって、会いたかった那奈ちゃんに会えるんだから当然だよね~!
でも会って何を話そう!?
まずは髪飾りを渡して‥‥‥‥それから‥‥‥‥それから!?
それから何を喋れば良いんですか!?
誰か教えてくれろ~!
いきなり告白するのってKYだし‥‥
まぁ、そんな勇気が有るはずも無いし‥‥‥‥
するとそこへ、アリサ奥様が現れて、
『どうもすみませんですね。
うちの那奈ちゃんが帰って、しばらくすると急に《やっぱりもう一方の髪飾りも欲しかったなぁ》なんて言い出して、しつこく言ってたから、わざわざ持って来ていただいてすみませんです。』
「奥様、お気遣い無く。
こちらとしては、わざわざお電話頂き、有りがたく思っておりますので。」
『そうですか!?本当にご苦労様です。』
「此方がお電話頂いたお品です。
どうぞご確認下さいませ。」
『すみません。ついでに娘の部屋まで持って行って頂けませんか!?
私、
これから旦那の会社まで行かなければいけない用事が出来たもんで。
お願い出来るかしら?』
「宜しいですが、お部屋は‥‥」
『そこのリビング横に在る階段を登って3階に上がって頂けませんか。
そしたら、右手に有るピンクのドアが娘の部屋になっていますので。』
おいらは言われた通り、髪飾りを手に階段を登って行った。
ピンクのドアを見つけ、軽く2度ノックした。
トントン!
『ハ~イ!』
「どうも、森本呉服ですけど…」
『中にどうぞ。』
「失礼します。」
と言って、ドアを開けて中に入って行った。
『どうもありがとうねぇ!』
「いいえ、とんでもない。
此方こそありがとうございます。
髪飾りを確認して下さいませ。」
と言うと、彼女は包装を綺麗にといて、中から出てきた箱をソッと開けた。