偽り

仁は香代に気づかれないように、手加減をしていると、香代が
「意外とやるんだ～。さすが次期当主。」
と俺にしか聞こえないような声で話しかける。
「いや～、もう限界だよ。」

と言いつつも、香代の右からの回し蹴りをかわす。
（さて、どうするかな??まったく気が抜けるどころか増えているみたいだし。）
仁は香代に軽く拳を当てにいく。

東間
（珍しく思い切ったな。）
と考えていると、香代の体から一本の紅色をした尾が現れ、仁の拳をとめる。
仁たちがいっせいにビクッとして様子をうかがう。
香代はなぜか笑顔で
「もっとしよう!!」
と興奮しているみたいだ。
仁が
「イリア、急いで忍を呼んでこい。」

東間が
「どういう状況なんだ??」

「おそらく、気が増えすぎたために、軽く暴走状態みたいだ。すでにアイツの意志はない。」
と冷静に答える。

東間が
「信長が出る可能性は??」
と恐る恐る聞く。
「多々ある。」
と一言だけ発する。
仁は爪を伸ばし、牙を鋭くして、戦闘体制をとる。

東間も、それを見て同じように戦闘体制をとる。

香代はそれを見ても、
妖艶な笑みを向けたままだった。