自由のギフト
「なにしてんの?」
緊張と恐怖で顔をひきつらせ、傘を握りしめる僕に、見た目とそぐわない、冷たい声でそう言うと、変な物を見るように冷たい目でこちらを見ていた。
「どちら様ですか?」
僕はその姿勢まま、恥ずかしさを隠すようにひきつらせた笑顔をつくる。
「温井 たちか君だよね。」
言葉に刺を感じながら、質問に頷く。
「これ、ママからのお手紙。
はじめまして、
東 ノカです。よろしくお願いします。」
彼女は僕に便箋を渡したあと、そこだけ取って付けたように子供らしいかわいい挨拶とお辞儀をした。
そして便箋を渡すとそそくさと僕の部屋の一等地のソファーへと向かいテレビを見出した。
軽いパニックをおこしながら僕は渡された便箋の宛名を確認し差出人を確認する。
確かに僕宛てで、差出人には、
ノカのママ
そう綺麗な字書かれていた。
確かにママからだと、馬鹿にされているような気持ちに引っかかりながらとりあえず封を破いた。

『拝啓 突然のノカの訪問どうかお許し下さい。
こちらの都合なのですがしばらくの間、ノカをあなたに預ける事が決まりました。
引き取りに行くその時までノカのお世話をしていただきます。
その為の生活費はあなたの口座に振り込んであり、あなたの事を知る友人、知人にも新ためて事の説明をする必要のないようにしてあります。
それでわノカの事どうかよろしくお願いします。』

なんだこの手紙は全く事の説明がない、それでも確かに僕宛ての手紙。何度見てもそこには僕の名前が書かれている。
そして僕のソファーの上には子供番組に目を輝かせて見入っている、少女がいた。
「あのぉ、人違いじゃないですか、僕は確かに温井 たちか なんですけどこの手紙だけだと、意味がわからないんですが。」
「間違いじゃないよ、ノカとママと二人で決めたから」
「決めたからって・・・。」
テレビから目をはなさずに答える少女、だんだんと困って行く僕。
その場に座り込みもう一度手紙を読み返す。けれどそこには僕宛てである事を否定する言葉は存在しなかった。
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