モテ男と地味子の初恋物語
「どうぞ」

小枝子は俺の前にコーヒーが入ったマグカップを置き、自分のも置いて椅子に座った。

黒と白のお揃いのマグカップから、煎れたてのコーヒーのいい臭いが立ち上っていた。
コーヒー豆は、喫茶店で使っているのと同じ物を、小枝子がブレンドしているらしい。

俺がコーヒーに砂糖を入れてスプーンで掻き混ぜていると、「ブラックで飲んだ感想はどう?」と小枝子が言った。

一瞬、何の事か分からなかったが、ここへ来る前、喫茶店で俺がブラックで飲むのを、小枝子は見ていたんだろうと分かった。

「苦かった。小枝子はよく飲めるな?」

小枝子はコーヒーをブラックで飲む派だ。

「うふふ。コーヒーの苦さは大人の味、かな」

「どうせ俺はお子様だよ」

「拗ねたの? 可愛い…」

小枝子は目を細めて微笑んだ。
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