モテ男と地味子の初恋物語
そんな小枝子を見ていたら、つい愚痴を聞いてもらいたい、という心境になった。

「俺ってさ、すごく嫌な奴だよな?」

「どうしたの、急に?」

「例えば今日だって、小枝子の劇団の練習日だっていうのに、こうやって押しかけてるし」

「忘れてたんだから、仕方ないんじゃない? 思い出してくれただけで私は十分よ」

「そうやって俺を甘やかさないでくれよ。俺は小枝子の都合も考えず、自分の事しか考えてなかった、自己中男なんだ」

「でも、店に来て『行ってもいいか?』って聞いてくれたじゃない? オッケーした私の責任よ」

「責任とかじゃなくてさ、要するに俺は人の事を全く考えないというか…」

「そんな事ないわよ。もし本当にそうなら、そもそもこんな話はしないでしょ?」
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