モテ男と地味子の初恋物語
「え? はあ。どれがいいですか?」

「いいの? やったー! じゃあさ、えっと…卵焼き?」

「いいですよ」

私がお箸を逆に持ち替え、卵焼きを摘んで片山君を見たら、片山君は「アーン」とか言いながら口を開けていた。

な、何?

私が固まっていると、片山君は口を閉じ、「口に入れてくれないの?」と言った。

ああ、やっぱりそういう意味だったのか、とは思ったけど、ちょっとね…

「そんな事、できません」

と私が言うと、「チェッ、じゃあ…はい、ちょうだい?」と手の平を出して来たので、「どうぞ」と言って、その上に卵焼きを乗せた。

片山君はそれをバクッと口に入れ、何回かモグモグしてから、「すげえ旨い!」と言ってくれた。

「そうですか? それはよかったです」

そう言って何気なく桂木君を見たら、こっちを恐い顔で睨んでいた。表情はよく見えないから、たぶんだけど。
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