モテ男と地味子の初恋物語
「じゃあさ、俺の傷で沁みるかどうか試してみるよ。な?」

「う、うん」

俺は消毒液を左手に持ち替え、右の人差し指の、猫に引っ掻かれて血が滲んだ所に消毒液をピュッピュと掛けた。

「うっ」

一瞬でビリビリっと来て、すごく沁みた。腹が立つほどに。

しかし俺は、少し声が出て、一瞬顔が歪んだかもしれないが、すぐに平静を装った。

「沁みたの?」

女子が不安そうに聞いてきたので、「全然、大丈夫」と答えた。

「でも、痛そうな顔して『うっ』って言ったよ?」

「そ、そうか? 一瞬、ちょっとだけ沁みたかな。でも、ほんの一瞬だから」
< 34 / 268 >

この作品をシェア

pagetop