モテ男と地味子の初恋物語
「あの…絆創膏でいいと思うんですけど?」

「え? ああ、そうそう。傷の長さに合う絆創膏がなくてさ、ちょっと大袈裟かもしれないけど、今日だけ包帯を巻いとこう?」

「そう? じゃあ…」

と言って紬が包帯に手を伸ばしたので、俺はその手を押さえて、「俺がやるよ」と言った。

紬がハッと息を飲む気配がしたけど、俺は顔を合わせず、というか合わせられず、もうひとつの丸椅子を引き寄せて紬の前に座り、下を向いて黙々と包帯巻きの作業に徹した。

手の平に、紬の小さくて柔らかい手の感触がいつまでも残っていた。熱を帯びて。

静まりかえった保健室の中で、俺と紬の息遣いだけが聞こえていた。
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