モテ男と地味子の初恋物語
「赤外線、出来るか?」

「ううん、やった事ない」

「じゃあ、貸してくれる?」

俺が紬に手の平を差し出すと、紬はすんなりと携帯を渡し、「お願いします」と言った。

俺は片手に自分の携帯を持ち、もう片方に紬の携帯を持ち、オーナー情報を右から左へ送信と受信。次に左から右へ…

紬の携帯のアドレス帳に『桂木琢磨』が登録されたのを表示させ、紬に渡した。

紬は携帯を両手で包み込むようにして持つと、微かにだけど嬉しそうな顔をした。

そんな紬の顔をジッと見ていたら、こっちを向いた紬の視線とぶつかった。

1秒か2秒か…
先に視線を外したのは紬だった。

その視線が俺の携帯に向いていたので、「ちょっと待って」と言い、アドレス帳の『名称なし』を、急いで『雨宮紬』に直し、それを紬に見せた。
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