レモンドロップス。
「自分の気持ち、中途半端にごまかしてたのかも。怖くて」
振り返ると、乾君は急に小さくなってしまったみたいに、頼りなげに見えた。
「・・・乾君?」
「あいつの気持ちを知るのが怖かったのかもしれない。
いずみの、本当に好きなやつのこと・・・」
「・・・」
あたしは何も言えなかった。
「それで、菜美ちゃんの優しさに甘えたんだ、たぶん」
「もう、言わなくていいよ」
「・・・ごめん」
乾君はそう言って、深く頭を下げた。
学校を急いで走り出ながら、乾君の言葉がよみがえった。
―――いずみの、本当に好きなやつのこと・・・
その言葉に、陽斗を思い出してズキンと胸が痛んだ。
そしてなぜか、健にぃの体温を思い出してまた胸がチクンとする。
でも、今はその全部の気持ちにふたをしておかなきゃ。