レモンドロップス。

「それは・・・」

違うよって言おうとしたけど、言葉が出てこない。

「自分らしくしてるだけで、悪いことしてないって思ってても、それが人を傷つけてるんだなあって思って、急に怖くなったの」

ひざにあごを付けると、急にいずみちゃんの目が潤んだ。

「あたしも人を傷つける、そういう運命なのかなって思うと、これからどうしたらいいのか分からなくなって・・・」



「大丈夫だよ!」

反射的に、口からは言葉が飛び出した。

「陽斗も乾君も、いずみちゃんのこと良く分かってる。昔のことも、今のことも。全部の姿を知ってて見守ってくれる人がいるんだから、不安なときは頼ればいいんだよ」

いずみちゃんは黙って川面を見つめている。

「そういう関係って、ちょっとうらやましい。」

つい本音が漏れた。

そういうことも含めてあたし、いずみちゃんに嫉妬してたのかも。

「それに、人を傷つける可能性は誰でもあるよ。その若さでそれに気づくなんてたいしたもんだよ!」

「・・・人ごとだと思って」

そう言いながら、いずみちゃんはちょっと笑った。

夕日に照らされたその顔が、りんごみたいにふっくらと赤かった。

あたしもつられて笑う。


と、その時、



「お~い」




この声は・・・!


< 121 / 285 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop