レモンドロップス。
パッと振り向くと、すぐ後ろに陽斗が立っている。
「陽斗!いつからいたの?」
ていうか、どこから聞いてたんだろ・・・?
「裕次郎から彩香のこと聞いて、追いかけてきた」
陽斗はちょっと笑うと、あたしの頭をポンポン叩いていずみちゃんに近寄った。
「いずみ、帰ろう。」
陽斗の背中越しにいずみちゃんの、今にも泣き出しそうな顔が見える。
「でも・・・、あたし」
「あんまり心配かけんなよ。めっちゃ焦ったじゃん。」
いずみちゃんのそばにしゃがみこむと、
「もう大丈夫か」
そう言って、背中をなでた。
前だったら、胸がちくっとしたかもしれない。
でも今は、なぜかその光景に心が暖かくなるのを感じた。
あたしも、ちょっとは変わったのかな・・・?
陽斗は立ち上がると、
「彩香、おれちょっといずみを送ってくるわ」
「・・・うん」
あたしが陽斗を見上げると、
「彩香もゴメン。おれ、お前の不安な気持ちに気づかなくて・・・」
「ううん。あたしこそ、自分の気持ちばっかりで」
言い終わらないうちに、陽斗はあたしの手をきゅっと握った。
「マジでありがとう。ほんとに」
その言葉に、あたしの心にも光が差したみたいに目の前がほんのり明るくなった。
2人を見送って振った手も、ほんのり暖かいまま。
光の中でいつまでもぬくもりは消えなかった。