レモンドロップス。
いずみちゃんはあたしの顔をちらっと見ると、
「いきなりゴメンね。でも、順番に話した方がいいと思うから」
「ううん。2人のことちゃんと知りたいよ」
あたしがそう言うと、ホッとしたようにいずみちゃんは続けた。
「離婚してからも、パパはこっそり陽斗に会いに行ってたの。その時、何でか分からないけど、あたしも連れてたことがあったのよ」
『ほら、いずみ、お兄ちゃんだよ―――』
そう言って、陽斗のお父さんはいずみちゃんに陽斗を紹介したみたい。
「その時のこと、今でも覚えてる。陽斗は目をキラキラさせて、頬を赤くして、はっきり怒ってるように見えた」
不思議な男の子に会った、そんな印象を幼いいずみちゃんは強く持った。
「パパと一緒に陽斗と会ったのは2~3回だけ。陽斗はすぐにパパと会うのを嫌がったし、ずっと会ってないんじゃないかな」
「・・・うん、あたしもそう思う」
お父さんのことを話すときの陽斗、やっぱり初めていずみちゃんが見たのと同じ目をしてるのかもしれない。
怒りをこめた目。
「あたしは小学校に入ってから、家庭のうわさを流されて、周りに白い目で見られたの。知ってるよね」
―――愛人の子、泥棒の子・・・
思い出すだけで、胸が痛かった。
「一人で家に帰る途中、あっ、その時は一緒に帰る友達もいなかったんだけどね、帰り道、あたしを待ち伏せしてる男の子がいたの」
「・・・その男の子が、陽斗?」
自然に口から出た言葉に、いずみちゃんは力強くうなづいた。