レモンドロップス。
「パパにも内緒であたしに会いに来てくれて・・・。もしかしたら誰かにあたしがいじめられてたこと聞いたのかもね。」
いずみちゃんの頬に赤みがさしたように見える。
「一緒に帰ろうって言われて、何でって聞いたら『だって妹じゃん』って恥ずかしそうに言ってくれたんだ。」
「いずみちゃんにとって、陽斗は救いだったんだね」
あたしは思わず、そう言った。
ひとりぼっちだったいずみちゃんの気持ち、こっそりいずみちゃんに会いに行った陽斗の気持ち、幼い2人のことを想像すると、なんだか切ない。
いずみちゃんはにっこり笑って
「うん、あたしは陽斗に救われたよ。」
それから2人は時々会うようになったそう。
近所のうわさもあってぎこちなくなった両親の仲、居心地の悪い学校のこと、いずみちゃんはいろんなことを相談して・・・、
「陽斗と仲良くなって、裕次郎たちと遊ぶようになって、陽風を結成してからは練習とかライブを見に行くようになって・・・。でも、うわさでいじめられたことがあったから、あたしたちの関係はなるべく内緒にしてたの」
陽斗もそう言ってた。いずみちゃんを守るために・・・。
「やっぱりちょっとうらやましいな、お兄ちゃんに守られてる妹って」
あたしがそう言うと、
「うん、陽斗には感謝してるよ、いつも。でもね・・・。」
カラン、ふいにトロピカルティの氷が崩れた。
「それが兄としてなのか、それとも一人の男の子としてなのか、分からなくなってきたの」