レモンドロップス。
思わず息を呑んだ。
「それって、陽斗のこと・・・」
「好き、なのかもしれない。男の子として」
いずみちゃんは急に早口になって、
「最初は兄だと思ってたけど、だんだん一緒にいる時間が嬉しくて、でも苦しくなって・・・。こんな気持ちになる自分が怖い・・・。」
目から涙が一粒こぼれた。
「菜美から、陽斗と2人でいること責められて本当の関係を言わなかったのも、陽斗への気持ちが分からなくて、兄妹って言い切れなかったからかもしれない」
「もしかして、あの後いなくなってから陽斗に連絡しなかったのは、陽斗から離れようとしてたからなの・・・?」
いずみちゃんがうなずくと、また涙がぽたりとテーブルに落ちる。
「陽斗と一緒にいる時間はあたしの宝物なの。なくしたくない。でもこれ以上一緒にいたら、自分の気持ちがどうなるのか分からない。みんなを不幸にしちゃうよ」
あたしには言葉もなかった。
好きになりそうな気持ちを抑えなければいけない、そのために必死に自分から離れていこうとしているいずみちゃんに胸が痛んだ。
「ごめんね、生々しい話で。気持ち悪いでしょ?」
妹が兄を、なんてね。
目を赤くしながら、いずみちゃんは笑って言った。
「そんなことないよ。悪いことしたわけじゃないよ」
あたしは胸が詰まって、そう言うのが精一杯。
フン、といずみちゃんは鼻をすすると、まっすぐにあたしを見た。
「今日ね、彩香に会いたかったのは、お願いしたいことがあったからなの」