レモンドロップス。

キュッ・・・。


健にぃは急にソファから立ち上がると、あたしを正面から抱きしめた。


「偉いっ!そこまで決心できればもう大丈夫だな~」

そう言いながらあたしの頭をポンポン撫でた。


「ちょっと、大げさ過ぎだからっ!もう~」

抱きしめられながら、あたしはちょっとホッとした。

良かった、いつもの健にぃだ・・・。



「健にぃ?」

いつの間にか、健にぃは時間が止まったみたいにあたしを抱きしめている。


「・・・そっか」

健にぃの声が耳元で聞こえた。

「俺はフラれたか」



「・・・えっ?」

健にぃの顔を見上げると、健にぃは微笑を浮かべたまま、スッとあたしから離れた。


「戸田とうまくやれよ、宮崎」

「・・・うん、ありがと。がんばるね」


健にぃはニッと大きく笑うとまたあたしの頭をポンポン撫でた。





―――「失礼しました~っ」


社会科準備室を出ると、あたしは大きく息をついた。

音楽室に戻るため、ゆっくり廊下を歩き出す。



健にぃ、ありがとう。

あたしのこと、好きになってくれて。


なんでか不意に、泣きそうになった。



・・・陽斗の声が聞きたいな。

あたしはポケットから携帯をゆっくり取り出した。



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