レモンドロップス。

びびりながらのライブは1時間ちょっとで終了。

いつものように舞台裏に行こうとしたら、扉の前には出待ちっぽいファンの子がちらほら。

なんか、正面突破しづらいなあ・・・。


こんな時に堂々と中に入れる度胸があればいいんだけど。


「彩香、もっと胸張って!彼女なんだから遠慮することないって!」

菜美がいたら、こんな風に励ましてくれると思う。

でも、菜美はいない。



―――「あたしはしばらくライブに行くのやめとく。乾君に顔合わせづらいし・・・。」

部活の練習で会った時、菜美はそう言ってうつむいた。


「乾君のことまだ好きだけど・・・、今は会う資格ないって思うから」

「そんなことないって。いずみちゃんだって恨んでないよ。確かに菜美の言葉はショックだったと思うけど、あの時は他にもいろいろあったから・・・」

「わかってるよ」

菜美はにっこり笑って言った。

「でも、自分があんなに人を傷つけるなんて思わなかった。またあんな風に自分が変わっちゃうのかと思うと、なんか怖いんだ」

「菜美・・・」

そう言えば、いずみちゃんもそんなこと言ってたな。

恋をすると自分が変わる、本当の自分の姿に怖くなる・・・。


「あたしはしばらく謹慎してるけど、彩香はちゃんと戸田君を応援してあげなきゃダメだよ!」

「いてっ!」

菜美はあたしの背中を押すように、バシッと叩いた。



一人ぼんやりとそんなことを思い出していると、

「きゃっ!!」

後ろからぐいっと腕を引っ張られた。



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