レモンドロップス。
静かに陽斗の肩に頭を持たせかける。
陽斗はあたしの手をしっかり握った。
物置の中は薄暗くて、細く外の光がもれている。
外の女の子の声がなんだか遠く聞こえた。
「静かだね」
「・・・おいしいシチュエーション」
「なにそれ、やらしい言い方」
「彩香も同じこと考えてたんじゃないの」
「ばか」
うそ、ホントはかなりどきどきしてた。
扉一枚向こうには、人がいっぱいいる中で、あたしたちはこうして二人っきり。
そりゃどきどきするよ。
「彩香」
「ん?」
その先はもう分かってる。
引き寄せ合うように唇を合わせた。
そのキスはとてもあったかくて、薄闇の中の小さなともし火みたいだった。
あたしはこんなにも陽斗が好きなんだ。
「陽斗」
「ん?」
口角を上げた、得意げな顔が目の前にある。
この顔、あたしが何考えてるか知ってるな。
悔しいから言わないでおこうっと。
とその時、
コンコンコン
扉を叩く音がした。