レモンドロップス。
「・・・なんか久しぶりに興奮したかも」
「え?」
帰り道、あたしの家の近くでバイクを止めると、ヘルメットを脱ぎながら陽斗がポツリとつぶやいた
最近ライブで遅くなったときは、時々陽斗がこうして家までおくってくれる。
「今までプロデビューとか考えてなかったし、ずっとバンドできたらそれでいいって思ったんだけど」
街灯に照らされた陽斗の頭はボサボサだけど、つやつやと輝いている。
「陽斗はほんとに音楽が好きだもんね」
「だけど、欲が出てくるんだなあ。
もっとたくさんの人に聞いてもらえるチャンスが来るかもって思ったらけっこう本気で嬉しくて」
「陽斗は欲張りとかじゃないよ。
陽風の音楽、あたしも大好きだし、もっとたくさんの人に聞いてもらえたら最高!」
「・・・俺より嬉しそうじゃん」
「だって嬉しいもん。
あ、でもデビューしたら今よりもっと人気出ちゃうし、陽斗が遠くに行く気がしてさみしいかも・・・キャッ!」
陽斗がいきなりギュッとあたしを抱きしめた。
「気が早いんだよっ、彩香は!」
そう言って笑いながらあたしの頭をポンポンなでた。
「まだデビューできるって決まったわけじゃないし、なに焦ってるんだよ」
「うん、そうだよね・・・」
あたしも負けずにキュッと陽斗を抱きしめた。
今はこの幸せを大事にしなきゃ・・・。
「あ、そうだ」