レモンドロップス。
◇夢
その日、あたしの誕生日は雲ひとつない秋晴れだった。
道を歩いていても、10月の爽やかな風が頬をかすめていく。
う~、最高の誕生日日和だよ!
1週間前からてるてる坊主を吊るしてお祈りした甲斐があった♪
「何ニヤニヤしてるんだよ」
「は、陽斗!?」
いつの間にやって来たのか、陽斗があたしの前に立ちはだかる。
バイクを歩道の傍らに止めて。
「なんかやらしい想像してたんじゃないの?」
「それは自分でしょ~!一緒にしないでよ!っていうかなんでここに?待ち合わせ場所は駅前公園じゃ・・・」
「・・・まあ気持ちが先走ったていうか、・・・待ちきれなかったっていうか」
「ん。陽斗、顔赤い・・・?」
待ちきれなかったって・・・、もしかして照れてる?
なんか・・・新鮮!
ますますあたしのニヤニヤが止まらないよ~!
「ほらっ、行くぞ!」
陽斗はあたしの視線に気づいたのか、あわててヘルメットをかぶると乱暴にあたし用のヘルメットを投げた。
「も~、危ないなあ」
文句を言いながらもバイクにまたがった陽斗の背中にしっかりとしがみつく。
いつの間にか、陽斗の意外と広くて暖かな背中はあたしの指定席になっていた。
「ね、今日はどこ行くの?」
「ひみつ!」
・・・まあ、予想できた答えだけどね。
そしてバイクはブルンと軽快な音を立てると、青空目指して一気に飛び出した。