レモンドロップス。
どこまで走っただろう。
30分、いや一時間近くは走ったかな。
あたしたちは街を抜け、田んぼを通り過ぎて、一気に山を越えた。
こんなにバイクで遠出したのは初めてだな・・・。
夏休みに初めて乗せてもらった時も街の中をぐるりと一周しただけだったし、それ以外もNinaの送り迎えがほとんどだ。
「俺は慎重派なの。彩香を乗せてるときは、特に無茶したくないんだ」
いつか陽斗は胸を張ってそう言ってた。
なに威張ってんの、って言ったけど、確かに陽斗は変にスピードを上げたり、カッコつけた無茶な乗り方は絶対しなかった。
陽斗はすごく大人なライダーだった。
それなのに今日はどんどん遠くを目指す陽斗にちょっと不安を感じつつも、あたしは風を切る心地よさに思わずうっとりしてしまう。
このまま2人が一つになって、風と一緒にどこまでも飛んでいければいいのに。
つい、そんなことまで考えてしまった。
山道の滑らかな下りを走りきると、陽斗はゆっくりスピードを落とした。
着いた、のかな?
なんか田んぼに囲まれた、ただの田舎道の駐車場みたいだけど・・・。
その砂利だらけの駐車場にバイクをとめると、
「目的地に到着」
いつものいたずらな笑顔で陽斗は宣言した。