レモンドロップス。

「ここ・・・?」

「そう、ここ」


って言われても、まわりは田んぼしかないですよ~。

あとは今走ってきた一本道がまっすぐ続いているだけ。

周りにはひと気がほとんどなくて、風が稲の間をサワサワと抜ける音が聞こえてくる。


「彩香、こっち」

陽斗はあたしの左手をとると、田んぼのあぜ道をスタスタ歩き始めた。

「あ、うん」

ふいに手を握られてちょっとドキドキしながら、あたしもあぜ道を進む。


誕生日だからと思って、一応おしゃれしてきたのになあ・・・。

1回しか着てないワンピース。

それに買ったばかりのブーツはまだちょっと暑いけど、かわいいから履いてきた。

まさか田んぼの中を歩く羽目になるなんて。


「陽斗、どこまで行くの・・・?」

思わず情けない声で聞いてしまうと、ぐんぐん前を歩いていた陽斗はぴたっと足を止めた。

振り向くとニヤっと笑って

「・・・彩香、目つぶって?」


え?なに??


< 142 / 285 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop